猫髭公爵

インポッシブルの猫髭公爵のレビュー・感想・評価

インポッシブル(2012年製作の映画)
4.2
津波により離れ離れになった家族の奮闘映画。

2004年のスマトラ島沖地震により起こった津波。劇中、その津波は予兆を見せぬまま突如多くの人々を飲み込んだ。
リゾート地は一瞬にして地獄と化し、何もかもが濁流に流される凄惨な光景が広がる。
主人公一家の母と息子がその濁流の中で足掻くシーンは絶望感がすごい。
激流に逆らうこともできず、流されてくる様々な物に体をズタズタに傷つけられていく。同じ状況に遭ったなら、自分は生き残れる自信が全くない。
この映画を観たら津波の事を舐めてかかることなどできないだろう。

この作品では、津波事態の恐ろしさも生々しく描いているが、同じく家族と離れ離れになることの恐ろしさも主として描いている。
運よく生き残ったとしても一緒にいた家族と離れ離れになってしまった…この絶望感は計り知れない。
凄まじい津波の威力を見せられたばかりだ、見失った時点で二度と会える気がしない。
病院には多くの被災者が溢れかえっている。それも一つの病院だけではない。近場の病院は全て同じような状況だ。
連絡を取る手段もなく、もちろん病院に電話等で問い合わせるなど不可能な状況。
多くの病院に出向き多くの人々の中から家族を見つけ出さなければならない。そもそも病院に辿り着いているのか、生きているのかも確証がない…考えただけで心が折れそうだ。
逆に家族と再会できた人のシーンは、どれだけ絶望的な状況でも諦めないことの大切さを感じさせてくれる。

内容としては、津波の恐ろしさを嫌という程感じさせてくれ、津波に対する危機感をキチンと植え付けてくれる。
実話を基にした映画ということで、主人公一家の実体験を基にしているらしいが、終盤はなかなかのご都合主義感が強くあっさりしているようにも感じた。実際にそんな感じだったのかもしれないが、なんか物足りないというか…。

地震と縁が強い日本…故に津波に対する意識はちゃんと持っておくことが大切である。本作のような身構える間もなく襲い来る津波はほぼ防ぎようがないが…。
猫髭公爵

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