似太郎

夏の終りの似太郎のレビュー・感想・評価

夏の終り(2012年製作の映画)
3.7
これは公開当時、全く評判にならず主演の満島ひかりの名演技の無駄使いとか色々バッシングの対象となった瀬戸内寂聴原作による不倫/よろめきモノ。

小説は既読済みだったので非常に実直な作りだと個人的には感じた。監督は『鬼畜大宴会』の熊切和嘉。さすがに中島貞夫の弟子だけあって戦時下の日本を舞台にした重厚な映像を堪能できる。

イマドキでラフな印象の全く無い、土着的な70年代のATG映画みたいな雰囲気が強く押し出されている。そういう意味でこの監督の趣向はハッキリとしている。

時系列を敢えてズラしたり色々実験的な手法が随所に施しており、この手の邦画にはあまり見られなかった斬新な表現が突出している。試みとしては相当、野心的なものである。

惜しむらくは宇治田隆史氏の手がけた脚本が…。中途半端だった。後半にかけて完全に内容が破綻しており痛々しい出来栄えに。

思えば『空の穴』や『ノン子36歳』もそんな徹底し切れていないある種の「中途半端さ」「モヤモヤ感」の残る映画で多分、このタッグを組む脚本家に問題があるようだ。結果的にもう少しで力作になった所を全て打ち消されたような残尿感だけが残った。無念でござる。😔
似太郎

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