松瀬研祐

ホーリー・モーターズの松瀬研祐のレビュー・感想・評価

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)
3.9
様々な役を演じるドニ・ラヴァンの、皺が刻まれた頬。『アレックス三部作』のあどけなさは見る影もないが、その裸体は歳を重ねているものの鍛えられた身体として映画に現れる。思えば、カラックスの作品で、ドニ・ラヴァンはどれほどその身体をさらけ出しているだろうか。走る。脱ぐ。ただ、そこにいる。

この作品では、さらにこれでもかと演じ分けをする。演じる役名が、その名もオスカー。

オープニング、タイトルバックで描かれる映画館の観客の描写。彼らによって映画は観られる。では、カメラの無いところで、役を演じるオスカーの振る舞いはなんなのか。いや、カメラはある。彼の振る舞いは僕が外側から観ている。実際、短編集として割り切れば、一つ一つの作品の中で、オスカーという役を演じるドニ・ラヴァンが演じ切る様々な役どころの物語は、見ごたえがある。映画とは、俳優とは、演じるとは、なんなんだろうなぁと思いつつ、点滅するライトの中で、この映画は終わる。
松瀬研祐

松瀬研祐