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プッシャー3のkjmのレビュー・感想・評価

プッシャー3(2005年製作の映画)
3.6
前作、前々作にも登場したミロが主役。
年老いた裏社会のボスの哀愁が溢れるゴッドファーザーpart3的な作品。

物語は主に二つの場所を行き来する形で進む。一方は娘と共に過ごすパーティー会場。こちらでは話し声や音楽が賑やかに聞こえ、ミロも笑顔で饒舌である。
他方はミロの店のシーン。こちらは緊迫感と静謐の中でドラッグや裏稼業に関する会話がなされる。ミロの口数は少なく表情も固い。
この対比が繰り返され、徐々に後者が前者を侵食していく。
ショッキングな出来事を経て、ラストはパーティー会場でも店でもない場所、自宅で、ミロは空っぽのプールに自分の心情を重ねる。

ミロにとっては、クスリ売買のトラブルも殺人も死体遺棄も(「大きな問題」と口にはしていたが)そこまで大したことではないだろう。シリーズ1作目の「人生詰んだ」フランクや、父親を殺し、赤ん坊の息子を奪って逃げ出した2作目のトニーのような劇的な状況ではない。
だが、結局クスリからは抜け出せず、裏社会から足を洗えない。活力も権力も弱っている。そんなミロは、前の2人とも変わらぬ程に隘路に嵌っている。
ラストシーンはそれを上手く現しており、エンドロールへの入り方、エンディング曲と相まって、珠玉の幕引きだったと思う。
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