Shibawithbread

プライズ〜秘密と嘘がくれたもの〜のShibawithbreadのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

1970年代。アルゼンチン。
 砂色の土地に住む七歳の少女セシリア。そばかすにすきっ歯、柔和な桃色の頰。
 年若き母親と潮風のあたる小屋で二人、暮している。いつも沈んだ面持ちの母。母に笑って欲しい、その一心でおどけてみせるセシリア。
 学校生活を始めたことを期に友を得て、ワルイコトも知っていく。そしてある日訪れた軍曹が告げた言葉、軍を賛美する作文を書き国旗を描くこと。真実を書いた作文の内容を母に告げると、すぐさま荷造りをし教師の元へ書き直しを願いに向かうことに。なんとか許しを得て書き直したそれは大勢の生徒の中から見事最優秀賞に選ばれてしまう。
 授賞式に行きたいセシリアと軍からの賞など受けさせたくない母親。授賞式の前夜に知った真実に憂鬱な顔、きつい靴。旗を見上げる人々と、軍人の響く声。鳴り響く拍手と重い足取り。

「先生だって心苦しいのよ」
「寒いでしょ」
「でも歩きなさい」

「誰かが“悪さ”をしたらいいなさい。その子の行動を正せるわ」

・社会保障番号私もわからないよ…(・ω・`)
・枕元、裸電球の間接照明が個人的に好みすごく欲しい
・教師がすんごいいらっとくる笑顔で言うこと聞かせてくる感じ
・監督(女性、1968年ブエノスアイレス生まれ)の半自伝的作品
・鬱々としているけれど暗澹とした彩度の低さが美しい

 幼い残酷性。自分の腕を金属片で突き刺し、かわいそうな友達を慰める優越感。人に話してはいけないけれど、書くことと話すことは違うでしょ?行かないと言ったその足でその場所へ迷わず向かう。
 子を守りたい母親と、それを理解しきれない幼いセシリア。
 ほんと親をやっている人尊敬してしまうわ。特に危険な状況かなら自分一人の身もままならないのに、分別付かない幼子抱えてじゃあね。子供に強いている、耐えているその思いも感じているから一入じゃ。
 
 沙の上でフードを深くかぶり、赤毛を砂風に晒す。その涙は風で乾き嗚咽は風の音に消える。そして歴史という砂に埋もれていくのだろう。いつか掘り出される時まで。

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計り知れぬ愛の象徴
目前にすると圧倒される
旗は空の下ではためくだろう