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きっと、うまくいくのakqnyのレビュー・感想・評価

きっと、うまくいく(2009年製作の映画)
4.6
3時間あるのでめちゃくちゃ暇な時に見よう見ようと思いながら3年くらい経ったので、ようやく。

優秀であることも成功することもどちらも素晴らしいが、それが目的になってしまうと途端に盲目になってしまう。その背景には、「子は親よりも豊かになる」という発展途上国共通の社会通念と、それゆえに後の世代が背負うプレッシャーだろう。「末は博士か大臣か」という言葉もかつての日本にあったように目指すべき目標が誰の目にも明らかになるから。
そんななかでこの映画のメッセージは一貫している。チャトルのような競争させられてきた人々が今や圧倒的に多数の世の中では、それが既得権になってしまい、学問の場としての大学は、彼らの再生産を行うに過ぎない。その社会は富を産むかもしれないが、自殺という弊害は大きく残る。
きっとうまくいくと唱えてありのままを生きることはそうした価値観や社会へのアンチテーゼでもある。

逆に今の日本は、過去の高度成長期の社会共通の目標は薄れて、ありのままを生きる"ことが求められている"社会だと思う。これまでの明確な指針もなく、むしろ人口減少、経済縮小というのが明確になってしまった社会では、そうしたありのままさを無意識に乱用し、何かにつけて自己責任や社会的責任転嫁が跋扈しているような気もする。やりたいならやればいい、君なら上手くいくさ、ただし補償はしないし、無駄なことに金は出せないといった具合に、「すべてうまくいく」という言葉は他者を救う言葉にもなるし、突き放す言葉にもなってしまう。

うまくいくためには本人の努力と己を信じ抜く心と、それから社会のサポートが必要だと思う。ランチョーもICEという巣があって、その背景には多分国民からの税金やサポートがあったからこそから飛べたと思うので。


コメディタッチながらも伏線を完璧に回収し、また学歴至上主義に一石を投じるバランス感覚が見事。

途中からカット全部ボルボのCMか?と思っちゃうくらいのインド北部の絶景がめちゃよい。
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