mirai

きっと、うまくいくのmiraiのネタバレレビュー・内容・結末

きっと、うまくいく(2009年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

2009年公開
監督・脚本:ラージマクール・ヒラニ

インドの工科大学を舞台に、持ち前の知恵と明るさで周囲の人を変えていく謎の?男のお話。

初めて観たインド映画。約3時間という長尺を感じさせない脚本が素晴らしかった。
笑えるシーン、グッとくるシーン、痛快なシーン。調べてみるとインドには「ナヴァ・ラサ(=9つの感情)」という考え方があるらしい。メモメモ。
あとインドの文化、風習、風俗的なものも観れる。台詞の節々に女性蔑視が残ってるあたり、特に。

以下、思ったことをつらつらと。
当時、インドのエンジニア至上主義は、社会問題になっていたのだと思う。そのために子を洗脳する者、他人を蹴落とす者、死を選ぶ者。人生を振り回される人間が作中にも登場する。舞台となる工科大学は、まさにその窮屈な価値観が詰め込まれた社会を写す鏡なのかもな、と。

その中、主人公のランチョーは救済者のような描かれ方をしている。「好きなことを仕事にするんだ」と親友を諭す。小学校では子どもらが好奇心を発揮し、深められる環境を整える。彼の周りで、それまで鬱々としていた人々の人生は、自分らしさを取り戻すことでまた輝き出す。

多くの物語には、主人公と相対する敵がいる。本作の場合は学長でもなく、チャトルでもなく、過剰な変化点を迎えたインドの市場経済なのではないかと思う。自由を謳う資本主義でも、特定の場所にお金が集まれば、「正解」が生まれ、ある種の全体主義的な空気が生まれる。大事なのは、その中でも自分の価値観=ものさしを持ち生きること。ランチョーはそのものさしと知恵とユーモアを手に、敵から周りの人々を救う。"Aal Izz Well"(きっと、うまくいく)という言葉とともに。世を悟り、苦悩する人々を救済したシッダールタも彼みたいな存在だったのかな。

と、つらつら書いたけれど、映画は最高でした。また観たい。
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