Sinamon

執行者のSinamonのレビュー・感想・評価

執行者(2009年製作の映画)
4.0
長年保留されていた死刑執行命令が思いがけず届き、心の中の苦悩と葛藤を募らせる刑務官たちの姿を通して死刑制度の是非を観る者に問いかける、韓国製社会派映画でした。

新人刑務官として赴任してきたオ・ジェギョン(ユン・ゲサン)を軸に死刑執行を担当することになった刑務官たちの苦悩と葛藤を観てとても辛く重い映画でした。

新人刑務官、死刑囚を力で服従させる中堅刑務官、ある死刑囚と親しくなり優しいベテラン刑務官を対比させ、最終的に死刑執行者となった三人の心の揺れが描かれてありました。

刑務所に、死刑囚として入所して来るのが、12人も殺害したチャン・ヨンドゥ(チョ・ソンハ)でとても不気味で人の命を何とも思わない死刑囚で見ていて腹が立ちました。

同じ死刑囚でも20年服役している60歳のソンファンと、ただ一人死刑執行経験のあるベテラン刑務官のキム刑務官との友情には胸が熱くなりました。

ソンファンの死刑が行われる準備の最後、キム刑務官がソンファンの震える身体をゆっくりとさすり、足の先の靴上にそっと優しく手を置いてやる仕草に涙が出ました。
死刑執行の日はクリスマスで外には雪が降っていてソンファンが「雪が降っているかい」と言いキム刑務官が「たくさん降っているよ」と答え執行されていく様子がとても悲しく苦しくなりました。

でも死刑囚は死刑になる罪を犯しているわけで、許されるべきことでありません。
もし自分の家族や大事な人や知り合いが殺されたならと考えたらこの映画を見た事により色々と考えさせられました。

死刑執行の準備から執行時の様子、その後の死亡鑑定までしっかり描かれてあって韓国と日本の死刑の方法が同じで日本でも実際行われている事だと思うとすごく重く響く映画でした。

死刑執行後に中堅刑務官ペ・ジョンホ刑務官の心が壊れていく姿を見て、刑務官の仕事を知れば知る程これほど精神的にキツく厳しい職業はないのではないかと思いました。
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