ケンヤム

愛のコリーダのケンヤムのレビュー・感想・評価

愛のコリーダ(1976年製作の映画)
4.5
今までで一番目を背けたくなるような映画だった。
バイオレンス映画は大好きだし、どんなグロいシーンでも直視できるのだけれど、この映画は違った。

なんで直視できなかったのかというと、刺激の強さとかそういうものに起因することではなく、本当に女に惚れるというのはこういうことなのかもしれないということにゾッとしたのだと思う。
「お前のやりたいことは、なんでもしてやりたいからさ」と藤竜也は繰り返す。
おぎやはぎの矢作かよ。とかそんなくだらないことは置いといて。
その言葉の通り、最終的に黙って首を絞められあそこを切られる。
相手のする行為全てを受け入れる。

誰でも純愛を求めるものだと思うけれど、究極の純愛は暴力と紙一重なのだ。
相手の中に入っていきたい、一つになりたいという人間の普遍的な苦悩と欲望。
男にとってそれは、一種の母体回帰てきな欲求でもあるのだと思う。
そして、女性は中に入ってくる男を求める。

セックスという行為だけを撮り続けて、ここまで人間の哀しさを描いてしまうところがすごい。
生きていることそのものが哀しくて、人間は結局愛を求める限り、死や暴力を求めずにはいられない。
だから、私たちはオーガズムに達することを「逝く」と表現するのだろう。

とっても、哀しい映画だった。
ケンヤム

ケンヤム