愛のコリーダの作品情報・感想・評価

「愛のコリーダ」に投稿された感想・評価

櫻

櫻の感想・評価

-
有名な阿部定事件をもとにされているということで、ずっと気になっていた。あまりに過激な事件内容ばかりが目立ってしまい、お定は狂っているとされてしまっているが、ひとりだけをつよくつよく愛し求め続けた純粋な女性だったのだと私は思う。

「じぶんとそれからたつたもひとつのたましひと 完全そして永久にどこまでもいつしよに行かうとする この変態を恋愛といふ」(「小岩井農場 パート九」宮沢賢治 より引用)のような恋愛の美しくも恐ろしい性質に、お定は従順に行動しただけで、最初は何も狂ってなどいなかったはずだ。「どこまでもいつしよに行かうとする」というのは、何も物理的に遠くへ行くのではなく、肉体と肉体とを越えて融合してしまいたいという欲求のことだと理解している。ただひとりにしか身も心も満たし得ず、混ざり合いたいと欲しながらも、肉体と肉体との壁は、本当はいつまでも越えられることはない。だから、果てにこの事件が起こってしまったのだと思う。

ほとんどを占めるふたりのまぐわいよりも、頑なに求めたり、試したりするお定を見つめる吉蔵の優しい眼差しが、なんとも切ないのが印象に残った。自分の手で終焉させたいというお定と、お定には何をされてもいいという吉蔵のふたりしか理解できない愛にたじろぐことしかできなかった。だが、理解できるかなどどうでもいいのだと思うし、愛に重いなんてないはずだ。時に愛は死に至るほど狂おしい純度の熱を持ってしまうのだろう。
moka

mokaの感想・評価

3.8
久しぶりに凄いの見た。最初は濡れ場多いなあ思ってたけど見終わった後はそんなことよりももっと別の何かを、凄さを、感じていた。また定の耳に彫られた刺青、吉の元妻の脇毛、68歳の芸妓のセックスシーンなど、完璧な体ではない所がリアルで美しかった。
赤鬼

赤鬼の感想・評価

3.0
吉原炎上が大好きなので、どうしてもそちらの方が思い入れが強く、この作品のインパクトを自分で薄めてしまったなとちょっと後悔。
これが阿部定事件か。阿部定役がなんとも言えない顔で微妙やったな
演技はすごい。が、終始内容にドン引き。最後の畳み掛けるような狂気さには顔が引きつってしまう。
うみち

うみちの感想・評価

3.5
実際にあった「阿部定事件」を題材にしたエロティックスリラージャンルの問題作。
ねっとりとした話ではありながら、映像描写としてはある種アダルトビデオの類とはまた違ったあからさまなエロで、これはアートだなと思った。
性と欲が混沌とする淀みの中に、煌めく狂気的な愛情。
吉蔵が定の欲望を引き出し、受け入れ、やがてその欲望は愛の大きさと反比例するようにエスカレートし、2人を大きく飲み込んでしまった。
定の心の穴はきっと性交を通じてしか満たされなかっただろうし、それを許し、受け入れる吉蔵の心もまた崇高なものだった。
ハードコアポルノと思いきや、ピュアラブですよこれは。
あゆみ

あゆみの感想・評価

3.9
幻の映画的な存在だったのが、数年前に完全版がリリースされたタイミングで観ました。

定役の女優さん、他の出演作を見てもやはりピンク映画の女優さんなんだろーか。
ほんとに艶っぽくて、美しくて、精神が壊れてしまった、狂ってしまった表情とかすごい!!

若き藤竜也もほんとに二枚目!
単純に、実際にセックスをしながら演技する。
セックスをしながらも、つまりは行為に没頭してはいけない。
それだけでも、映画の脱構築というか、ドキュメントを描いているようで、実はフィクションでしかないという虚と実が螺旋階段のようにグルグル回る。

愛のコリーダ(闘牛)なので要はセックスを通して男と女の殺し合い。
どっちがマタドールで、どっちが牛なんだろう。

僕は大島渚は、映画の虚構を解体する、ということで、「日本人」というものを解体する、とか、映画を言語にするために「政治言語化」しようと試みた作家だと思っているのだけど、初期作品においては比較的その脱構築や政治言語化は、実際のところ非エンタメ的で、上手くいってないと感じることが多かった。

そもそもが、エンターテイメントとして、という意識があまりないのかもしれないが、それ故に「映画」としての映像的なカタルシスも殺していた部分が多い気がする。
その欠落にセックスを描いていた気がするが、ストーリーも、映像的にも色っぽさが足りなかった。

本作における性描写については確かに過激かもしれないが、基本的にはアダルトビデオ的にも映る。
少なくとも、映画におけるセックスシーンの官能性というのは、直接的な描写には上手く宿りにくいものだとも思う。

やはり人物の魅力と、描くべき性の描写に物語的な必然をより強く感じさせないと成立しにくいと思う。
そういう意味で個人的に、官能を心から感じるセックスシーンというのはあまりない。

特に本作はセリフとしての猥語と行為の応酬で、卑俗な官能はあるかもしれないが、なかなかこちらの感覚に強く訴えるのは難しい。
特に変に生々しい会話にはエロスは乏しく、また、リアルに性描写を挟めばなおさら。
物語と映像のバランスは分裂している。

本作の後の「愛の亡霊」以降は非常に物語性を強調した作劇に切り替え、物語のドライヴ感がまさに巧みなエロスを表現していることを考えれば、大島渚も純粋に物語を語った方がいい、と思ったような気がする。
空衣

空衣の感想・評価

3.4
性を愛に転換する低俗さだけを切り取られると、もはや好き。
セックス依存症というよりか(吉蔵の?)男性器依存症なんだな、って妙に客観的になってくる。そして、あのラスト。
『愛の流刑地』と似てます
>|