みやび

コンプライアンス 服従の心理のみやびのレビュー・感想・評価

4.0
全ての意思決定権を権力者に明け渡せば、事件に関与した責任を問われないのだろうか?

本作はファーストフード店に警察を名乗る電話をかけ従業員を洗脳し間接的に性的暴行をさせるという、実際にあった事件を元に製作された。
事件の概要に人間関係の複雑さが脚色されているため、人間の心理が持つ不条理さがより説得力のある形で表現されている。

特に序盤のシーンは圧巻。
まだ事件が起こる前の店内でマネージャーと従業員2人の3人が会話をするシーンでは、会話をする3人を同時に捉えないカメラワークで、円満とは言えない職場の雰囲気や、中年女性マネージャーが抱える精神的な「弱さ」を徹底的に描いている。
晩婚、マネージャーとしての責任、職場関係の不仲。
これらが後の被害者となる若い女性部下に対する嫉妬へ、嫉妬は不信感へと変化する。

他の従業員が電話の主を疑っていたのに対しマネージャーだけは素直に従っていたり、少し褒められるとあからさまに機嫌が良くなっていたのが何よりの証拠なのかなと。
この作品が描く事件は嫉妬による盲目が生んでしまった悲劇という側面もあるのかもしれない。

とはいえ、こんな事件がアメリカで何十件近くも起きていたことには驚き。
「声」しか情報がないからこそ、簡単に洗脳されてしまうのかなとか色々考えさせられる。
みやび

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