猫八百

死よ、万歳の猫八百のレビュー・感想・評価

死よ、万歳(1971年製作の映画)
4.5
ホドロフスキーの盟友ということで気になって鑑賞。非常によかった。
グロテスクな表現という点では似通うが、アラバールの作品にはホドロフスキーにはないフェチシズムを感じた(まぁこの一本しか観てないけど)。夫を密告し、拷問し、汚物を浴びせて狂ったように嘲笑う。美しい女性の蛮行にはなんだかオゾマシイ魅力がありますよね。この映画に漂うのはそんな魅力かと。しかもそれらおぞましい行為の数々は全てファンド少年の空想だったり(密告は事実だ)。彼の母親に対して抱いてる感情はなんだろう。憎悪や嫌悪なんかじゃないよね。たぶん偏愛と猜疑。きっと基本的にはマザコンなんだろうけど、父の件に関する猜疑心が入り交じったことであんな空想が生まれるのだ。それともうひとつ、フェチシズムの観点からみると、幼馴染の少女の存在を忘れてはいけない。あの子に何か期待した人多いのでは?笑 彼女にはグロテスクな表現が一切伴わない。またファンド少年の心は常に母親に関する空想で満たされていて、少女に対する愛や恋慕などは描かれない。ゆえになんだか浮いた存在に映る。彼女だけ別の作品みたいな、唯一の癒しだ。笑
とにかく映像と音楽が最高!少年の空想はフィルム染めのような赤や緑で表現されていて、寺山修司を思い出した。「リアリティのダンス」よりも「田園に死す」に近いだろうか。音楽もセンス抜群で、冒頭からかなりテンションあがった。
決してグロさを売りにした作品じゃなかったです。
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