Jeffrey

死よ、万歳のJeffreyのレビュー・感想・評価

死よ、万歳(1971年製作の映画)
3.5
「死よ、万歳」

冒頭、時は内戦時のスペイン。少年は父がファシスト軍に連行されるのを目撃する。激しい拷問に駆られる夢、母が共産主義と父を売った手紙を発見、海、死の病、赤子、幻視、色使い。今、少年の眼差しで語られる悲劇が幕を開ける…本作はフェルナンド・アラバール監督が1970年にフランスで制作した彼の長編デビュー作で、初期のパニック芸術映画。この度DVDを購入して初鑑賞したが内容がカルトすぎてついていけない。アレハンドロホ・ドロフスキーを盟友に持ちカルト映画を世に生み出した作家で、日本では未公開の映画ばかりであったが、今回3枚組のボックスが売っていたのを購入して全て初鑑賞した。決して他人にお勧めすることのできない前衛的な映画である。

本作は冒頭に、子供の声で歌が歌われ、「ファンタスティック・プラネット」の共同脚本、原画で名高いフランスの作家画家ローラン・トポールの絵画で始まるのは胸熱である。そこから、アバンギャルドな映像でファシストを見つめる少年の眼差しから物語が語られていく。そして映像は緑や赤、紫等カラーバリエーションに色彩が変わる。 70年代の映画と言う事で、70年代初期と言えば寺山修司のATG作品もこういった手法がとられている。タイトルの意味はスペイン外人部隊創設者であるホセ・ミラン・アストレイの発言から抜き取ったらしい。

あの老人が散髪屋でカミソリで頭の皮膚を切り刻まれて変な瓶みたいなの押し付けられ炎で燃やされ出血するシークエンスが痛々しくて目を覆いたくなる。ありゃ何がしたいんだろう…?ストーリーの間に所々当時の資料映像が流れたりもする。それにしても息子の母親が彼に対して強引すぎるのがちょっと目に余る。彼を墓地に連れて行くからと言うことでベッドから叩き起こして風呂に入れてゴシゴシ体を洗って半ば強引に詰め寄るシーンとか強烈。それとホモ野郎だからと言う事でケツから始末してやるって拳銃をけつの穴に突っ込んで撃つ処刑場面も凄い。ホドロフスキーの映画はもちろんだが、不条理映画の作家ブニュエルの「砂漠のシモン」などを見ているかのような感覚にもなる。少年が教室で虫をカミソリで真っ二つに切断して実験的に歩かせる場面も強烈。それを見かねた先生が黒板の前に聖書を持たせて十字架のように立たせるのも印象深い。

さて、物語は内戦時のスペイン。ファンド少年は父がファシスト軍に連行されるのを見る。それからと言うもの、ファンドは父が激しい拷問に駆られる夢に苛まれるようになった。そんなある日、ファンドはある手紙を見つける。そこには、母が父を共産主義者としてファシストに売ったと言う内容が書かれていた…と簡単に説明するとこんな感じで、監督自身の自伝的な内容とも言える処女小説を自らの手で脚本、監督を手がけて映画化した作品とのことである。

いゃ〜、これもエグいくらい気持ち悪い映画であった。こんな映画今絶対作れないだろうなぁって言う内容である。なので当時はまだ自由があったなと少し恋い焦がれてしまう。今の夜中は全てが差別だ!で片っ端から封鎖されていってしまうし、多様性多様性と言いながら封殺する側の人間の多様性を無視してしまうし、嫌な世の中になってしまったもんだ。本作は食べ物を粗末にしていると思われる描写がいくつもあり、スパゲッティーを少年に塗りたくる場面の気持ち悪さ、羊の血だらけの死体(もがき苦しんでいる)や排便を人間の顔に落とすショット等とにもかくにもゲテモノだ。あの牛の首を切って殺す場面のグロテスクはすごいインパクトがある。あんな何リットルの血が流れるのを女性が顔に塗ったり縫い付けたり本当に気持ち悪い。悪趣味としか言いようがない。そんな衛生的に悪い所で接吻するし、役者も皆すごいな。

これは多分レンタルも配信もされてないと思うから、セル版のボックスDVDが中古とかではかなり安く売っているので気になった方は購入してみてはいかがだろうか。ただ、注意が必要な作品である。
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