Monsieurおむすび

海がきこえるのMonsieurおむすびのレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
3.8
#海がきこえる
ジブリ史上最も優しく漢気のある主人公ではなかろうか。そんな杜崎拓が都会から来た転校生 武藤里伽子に振り回された高校生活を追憶。

親の都合で高知の田舎に引っ越さなければならなかった里伽子の馴染めない感じ、馴染みたくない感じ、ここが居場所だと思いたくない感じ。
そんな中でそれといった偏見もなく、しれっと接してくれる拓。
単純な好きとは違ったのだろうけど、言うなれば友愛のような感情。揺れ動くというよりは矛盾を孕んだ若者らしい2人の交錯が瑞々しい。
曖昧な気持ちや当時の狭量を思い返すメタ的視点。高知の温かさそうな海や順光と逆光が鮮やかなライティング。90年代の街並みやガジェット。
携帯なんかない時代だから、家電にかけて怒られるまで電話したよね。
今よりも人間関係が深く尊かったようにさえ思えるエモさとノスタルジーに浸る。

ジブリの若手だけでやらせてみよう的なプロジェクトだったらしく、どうりでジブリらしくない。とはいえ、それは宮﨑駿や高畑勲からは決して抽出されないエッセンスであるように思えるので、ジブリのなかでエポックな作品と言える。
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