福福吉吉

武士の献立の福福吉吉のレビュー・感想・評価

武士の献立(2013年製作の映画)
3.5
料理上手な春(上戸彩)はその腕前を加賀藩料理方の舟木伝内(西田敏行)に買われ、舟木の息子の安信の妻に迎え入れられる。伝内は「包丁侍」として藩で働く安信の料理下手を春に治して欲しかったのだ。安信(高良健吾)は元々、料理の仕事を軽視していて、そこに腹の立った春は安信と料理で勝負して打ち負かし、安信に料理の稽古をつけ始める。

※「包丁侍」とは刀でなく料理(包丁)で藩に仕える侍のことです。

単純な喜劇と思いきや、加賀藩の改革派の策動やお家騒動など武士の世界での騒乱の中で、安信が「包丁侍」としての生き方や武士としての在り方の心情の揺れ動き、また、安信を心配する春の心情が上手く描かれており、ドラマとして良く出来ていると思いました。

主人公の春は料理を作ることに喜びを感じる女性であり、一度嫁いだが気の強さから出戻ることになった過去を持ちますが、明るく健気な女性だと感じました。しかし、本作では安信の行動や心情に寄り添って控えめなため、春の心情の部分の描写が少ないように感じました。その分、後半の春の行動や心情が際立っていたようにも感じました。

本作のキー・パーソンである舟木安信は武士として剣術で仕えるべきと考えていて、包丁侍としての自分に嫌気がさしています。この点、安信の過去が影響しており、その点も映像で描かれていて安信の気持ちがよく分かりました。また、加賀藩の改革派の会合に出るなど剣に生きる武士としてありたい気持ちも引きずっており、包丁侍として頭角を現す一方、剣術で生きることも諦めきれない安信の葛藤がよく描かれていました。

終盤の加賀藩主催の食事会のシーンは多くの料理が次々と出されていき楽し気に進むとともに裏方として料理に真剣勝負する安信の姿がカッコ良く描かれていました。

料理という仕事の大事さが伝わってきて、とても面白かったです。

鑑賞日:2023年2月19日
鑑賞方法:BS日テレ
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