『CUBE』の舞台を開拓時代のアメリカ西部に移した作品だと思いながら観た。
集団を維持し発展させていくために、正しい道を歩みたい。
「トライ&エラー」なんて悠長なことは言ってられない。
たった一つの間違いが取り返しのつかない結果をもたらすからだ。
あまつさえ何の手がかりもなしに進まざるを得ないこともある。
そして、誰かを信じてついて行かざるを得ないケースも起こりうる。
そんなとき集団の構成員たちはどんな優先順位で、どう考え、どう選択するのか。
周囲に流されるだけの人、
冷静な意思決定を試みる人、
疑心暗鬼に陥ってパニックになる人…
同じ状況に対して、人々が示すリアクションは様々。
選挙か、起業か、はたまた恋愛などの身近な例か。
いずれにせよ『ミークス・カット・オフ』は、それら現実社会で起こる「失敗が許されない」状況を、特定の場所や人々に当てはめた寓話の一つだ。
「自分がこの人たちの仲間だったらどうするだろう」という思考実験のツールに良いだろう。
今作で特に注目すべきは主従関係の変化の描写。
中盤までは男性だけで意思決定が行われ、女性たちはそれを遠巻きに眺めるだけだった。
それが、だんだん女性たちも自分の意思を積極的に示し、主張するようになっていく。
女性監督ならではのリアルな視点と演出で、男性優位で行われる政治経済システムへの警鐘に感じられた。
今作でもミシェル・ウィリアムズは得意の仏頂面を浮かべ、「男性中心主義に対する女性の反逆」の暗喩としてのライフルを毅然と構える。
実にシビれる姿だ。
("長身の銃を構える女性"がかっこいい映画と言えば
『袋小路』のフランソワーズ・ドルレアック
『狩人の夜』のリリアン・ギッシュ
『女王陛下のお気に入り』のエマ・ストーン
などが特に印象深い)
人物たちの選択が正しかったのか、明確な答えやカタルシスは最後まで示されない。
ラストまで一貫してリアリティに満ちた、静かな良作だ。