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私の男のmagic227のネタバレレビュー・内容・結末

私の男(2013年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

桜庭一樹の直木賞受賞作を、これ以外にはあり得ないだろうというキャストで映像化、久しぶりに日本映画の情念の深さを感じさせられました。現在から過去へと遡って行く原作の構成を解体し時系列にそって再構成したストーリーは賛否あるでしょうが、このラストシーンをやりたかったのならば正解だったと僕は思います。久しぶりに危ない奴を演じた浅野忠信の演技も凄いですが、やはり何と言っても二階堂ふみが凄まじい。この二人の前では並外れた目力を持っている筈の高良健吾がフツーの男に見えてしまいます。
映画の冒頭、災害で親を失いただ一人生き残った花は、水が一杯に入ったペットボトルをいつも抱えています。あれは失ってしまった愛情の象徴なのでしょう、やがて淳吾に引き取られると今度は淳吾を片時も放さず愛し続けます。まるでペットボトルを抱いているかのように。花にとって淳吾は決して失ってはならないもの、だから二人の愛を邪魔する全てのものを花は断固として排除して行きます。その強かさ、頑ななまでの美しさ、口に含んだピアスを小町に見せる時の妖しさ。これは実は「魔性の女」が誕生するまでの物語なのかも知れません。そして二階堂ふみはそんな「女」を文字通り全身で表現します。特に流氷の街・紋別を舞台に、純粋であるが故にどうしようも無く歪んでいる花と淳吾の愛を美しく描き出す前半部分は秀逸。そして舞台を東京に移し、花と淳吾の立場が逆転して行く様を冷徹に語る後半は、美しく変身して行く花の姿から目が離せなくなります。無音で見せられるラストシーンの花のセリフが何なのかここでは触れませんが、観るものが様々に考える余地を残してくれる映画というのはやはり魅力的、日本映画の良さを改めて感じさせてくれた作品でした。
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