しあつん

ラストタンゴ・イン・パリのしあつんのレビュー・感想・評価

ラストタンゴ・イン・パリ(1972年製作の映画)
-
アパートで同じ部屋を借りたいということで居合わせたポールとジャンヌ。2人は肉体関係を持つが、ポールはジャンヌに「名乗るな」と言い、あくまで道具としてしか彼女を見ていない(ように思える)。そしてジャンヌにはTVディレクターの恋人がいる。

ポールの正体が分からないままのジャンヌに比べて、観客の私たちはポールの背負っているもの(妻が自殺したこと)が分かっているからポールの心情を理解するのに状況的には有利なはずだが、それでもポールが考えていることは不可解ではあったし、ポールがジャンヌに対してとった言動は、一見妻の自殺が原因と思うが、そうとも言い切れない。

ベッドの上で死んでいたネズミの尻尾を掴んでマヨネーズかけて食べようぜと言ったり、亡くなった妻の遺体に向かって暴言を吐いたりするポールの本性はラストに彼自身の言葉によって語られるが、それも彼が認識している自分自身なので、ジャンヌに対してなぜあのような行動をとったのかはよく分からない。

だけどジャンヌからしたら、名乗らせてくれないことや、過去のエピソードを思い切って話しても関心を持ってくれない(ように見える)のはとても辛いし、だからこそ最後にポールが心を開いてくれたときにどうやって心を整理したらいいのか分からなくなって、ああいう結末になってしまったのか…

あれこれ語ってはいけないのかもしれないけど、そんなふうに思ったし、ラストの数十分のためにまた観たいと思った。
しあつん

しあつん