朝田

おとぎ話みたいの朝田のレビュー・感想・評価

おとぎ話みたい(2014年製作の映画)
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すごい。山戸結希という才能が映画というフォーマットに収まりきっていない。ここでは通常の映画の理論や倫理は通用せず、ただ刹那的なエモーションだけがカメラに記録されている。画面を覆いつくすような大量のモノローグやセリフ、話を語ることを無視した不規則なカット割りなどどう考えても映画的にはなりそうもない、アニメや小説のような手法が用いられている。にも関わらず、この作品がどうしようもなく映画的なのは、山戸が女優を危険なほど信頼し、崇拝しているからだろう。女優が画面の中で軽やかにダンスすれば、それは映画になるのだという強い確信を感じる。全てのトリッキーな手法も少女の内面と一体化している。だからこそ訳がわからないのに感動的なのだ。異様にリアルな女子同士の会話の後に訪れる男の教師による「ピナ・バウシュとか好きなんだ…」というウソ臭いセリフの落差。これは徹頭徹尾少女の視点から撮られた映画であり、他者は排除されていることが冒頭から既に示されている。普通に考えたら狂ってる。しかし理論や倫理を異様なエモーションで凌駕しようとする山戸の姿勢は映画作家として本来あるべき姿なのではないか。少女漫画的感性に基づいたセリフもパンチラインまみれでブチ上がる。
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