支配層はとにかく被支配層が死ぬか死なないかギリギリのところで選択肢のない生き方を続け、支配体制の永続に献身することを望んでいる。本来であればより多くの人が医療を利用できるリソースがありながらも、優れた社会システムがありながらもそれを多くの人が利用することを望まない。その社会の中では貧乏人にとっての「良い生き方」とはできるだけ制度に従順に、身体をボロボロにしながら死ぬまで働き続けることだ。
この前見た『タイム』や『トータルリコール』もそうだったけど、これはSFのあるある設定であると同時に人類を未だに蝕んでおる現実の問題だよなあ。
こういう設定だけでは陳腐になってしまうわけだけど、この監督特有のメカデザインによるアクションの映像が見応えがあるのでとても良かった。『第九地区』『チャッピー』ともに映像の質感とかもとても好きだったので、本作もすごく好みだった。
人間の内面的なところはそこまで刺さるものはなかったかなあ。死の瀬戸際にいて、人に与える余裕などない小さい女の子がなんの躊躇いもなくマックスに包帯を渡すところはすごく良かったけれど。人は誰かに何かをしてもらったという気持ちになった時、はじめて見返りを求めず贈与をすることができると内田樹が言ってたけど、そういう話なんだろう。けど、少しここは陳腐に感じた。