よしおスタンダード

しわのよしおスタンダードのレビュー・感想・評価

しわ(2011年製作の映画)
3.7
No.3041 (※No.3040は『セーラー服と機関銃』参照のこと)

今年4月に実父が亡くなった。

とある難病を発症して以降、数年間は寝たきりで、亡くなる間際は、かなり認知機能が低下していた。

「スマホが壊れて電源が入らないから直してくれ」と言われ、見てみると、

単純に充電されていなかっただけ、ということが繰り返された。

最初のうちは私も「しっかりしてくれ! 充電できてるかどうか確認してから言ってくれ!」

などと、多少きつく言ってしまっていたものだが、

段々と弱っていく父を見ているうちに、

その「親の老いと死」を本格的に受け入れる準備をしなければいけないな、

と、心が定まり、

以降、どんな無理難題が父から寄せられても、私は可能な限り答えてあげることにした。

そして、父は安らかに逝った。

この映画を見て、ふと、そんな「老い、認知症との向き合い方」について思った。

コロナを「ただの風邪、騒ぎすぎ」とのたまっている一部の人には、

我が家のように、病気で寝たきりの父が、万一コロナにかかった場合を考え、日々、覚悟し、神経をすり減らしている庶民の気持ちなど、かけらも分からないのだろう。

分からないなら、分からないでいい。

せめて思うだけにして、黙っててくれ。口にしないでくれ。

不特定多数の目に触れるようなSNSなり動画なりで発信しないでくれ。本当に迷惑なのだ。

昨今の有名人、政治家たちのそういう「失言騒動(本人たちは失言だと思っていないが)」を見聞きするたびに、

自分の発した言葉が、相手にどう受け取られるかを考え、言うべきか、言わざるべきかを「おもんぱかる」という、

最低限の礼儀というか、モラルが、本当に劣化していると感じる。