ひでぞう

ショーガールのひでぞうのレビュー・感想・評価

ショーガール(1995年製作の映画)
4.5
感動すら覚える。この映画は、ラジー賞をはじめ、最低映画の代名詞として扱われるが、しかし、ここで描かれる世界は、決して扇情的なものではない。ラスベガスのショービジネスにおける、ヌードダンサーの世界と、そこで、のしあがろうとする女性の物語であり、男性の欲望(娼婦として女性を視ようとする眼差し)を跳ね返そうとする強さがあり、ある種の潔ささえ感じる。これが、ポール・ヴァーホーヴェンの女性観であり、一貫している。
成瀬巳喜男の『放浪記』では、主人公:林芙美子が自らの貧しさと男性のふがいなさを容赦なく暴きながら、のしあがろうとする。「ゴミ箱のなかをぶちまけたような下品さ」とされながら、決してそれに屈することはない。そして、林は、自分のチャンスをつかむために、ライバルの原稿を故意に遅らせる。ここでの行動原理は、ノエミがおこなったことと同じもののようにみえる。男性の欲望の眼差しを跳ね返しながら、必死に健気に踊ろうとする。そして、自分のチャンスをつかむために、ライバルを階段から蹴落とす。文学とダンスという違いはあるが、どちらも必死に自分の貧しさから逃れようと、自分の力で這い上がろうとする。これは、決して下品で扇情的な映画ではない。
這い上がろうとしながら、決して、そのシステムに妥協しない。抗って生きるということの潔さが示された、素晴らしい映画だ。
ひでぞう

ひでぞう