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オンリー・ゴッドのパンのレビュー・感想・評価

オンリー・ゴッド(2013年製作の映画)
4.3
人にオススメしやすい作品ではないが俺は結構好き。
まずこの夜のバンコクの幻想的な映像が高得点だと思う。
レフン監督の良さが出てる。暴力シーンや格闘シーンも普通に良い。

映画のストーリーを簡単に説明すると頭のおかしい母親からの支配を描いた物語だ。
母の息子であり主人公演じるライアンゴズリングは平気で人を殺し麻薬の密売で生計を立ててる危険な男だ。
しかも感情のないロボットの如く冷淡な性格だが、なんと彼は大人にもなってこの母親に支配されてる。まるで言いなりロボット。
これほど裏社会で活躍してるような恐ろしい男が毒親の支配から逃れられずに言いなりになっているのだ。

多分普通の人はこの時点で不思議に思うかもしれない。
しかし幼少時代から支配され続けると親に逆らえなくなるんだと思う。
彼は母親を心の底から恐れ怯えているのだ。

どうやらレフン監督は自己愛性パーソナリティ障害の母親から支配、虐待を受けて育ったらしく、この映画はそんな母親に復讐するために"ヒットしない"とわかっててわざわざこの映画を作ったそうだ。
映画を使って復讐なんて初めて聞いた。
その点から考えてもかなり特殊な作品だろう。

まるでバッファロー66を作ったギャロみたいだな。
あれも毒親を描いた映画。
「俺の親はこんなに酷いんだぜ!」という共通のメッセージを感じるな。

肉体的な虐待なら話は簡単だ。
児相に相談するとか警察に行くとか出来る。しかし精神的な虐待は大人になっても泣き寝入りするしかないのだ。
心の傷は目には見えない。
この映画の主人公のように大人になっても親の呪縛や恐怖から逃れられない人間はこの世界にかなりの数いるし、そういう人にこそ観て欲しい映画だと俺は思う。

そして本編の話に戻る。
この悪党一家を成敗してくれるのはチャンという名の壮年の警官だ。物凄く強い。それこそ完全無欠の神のように。
あのカラオケのシーンは儀式だろうか?
なんならタイマンシーンも悪を成敗するための儀式に思える。
ライアンゴズリングも自分が裁かれるべき悪い人間だと自覚してる節があるんだよな。この映画内で。

舞台はアジアだがギリシャ神話の知識があればより一層楽しめると思う。
かなり難解な映画だし評価が低いのも仕方ないなという出来だが決して駄作ではない。現に俺は円盤を買って何度も鑑賞してる。
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