フィルモワ

ヘヴィメタル・イン・ザ・カントリーのフィルモワのレビュー・感想・評価

3.0
のったりと草を食む牛の牧歌的な風景と、烈しいビートに合わせ、ちぎれんばかりに頭を振り回す若者の図。いかにも対照的なようでいて、意外とチューニングが合うものですね。

ドンツドルフという、なじみの薄いこのドイツ南部の小さな村では、こうした光景が珍しくないそう。なにしろ、村で二番目に大きな企業が、メタル専門レーベルなのです!近隣のパート主婦が話を弾ませながらオドロオドロしいグッズの梱包もすれば、牧師さんの審判をもクリアしてしまうこの会社。反社会・反道徳的な音楽であったはずのメタルが、きちんとしたビジネスに展開し、不思議と社会に溶けこんでいる様がなんともシュールで可笑しい。

「メタルは田舎の音楽さ」と、旧知の友人たちとの親交を温め、強いて都会に出ようとはしないこの村の若者。そこにはしっかりとした共同体意識のようなものが根付いていて、内向的な爆発を、のどかなこの土地でうまく処理している印象を受けました。