『赤い鳥逃げた?』や『野良猫ロック』のように自滅せず、色々な葛藤を抱えつつひたすらズルズル生きるシラケ世代を描いた映画。ただし50年後の今から見ると「こいつら一体何やってんだ?」という奇行を連発し、冗談なのか本気なのかわからないことばかりやってる登場人物に辟易してくる。主人公のカメラマン(高橋長英)の、やる気がなくつねにうだうだしょうもないことをやっているキャラもそれに拍車をかける。
それからカップル同士の共同生活という70年代の新しいスタイルを描こうとしている割には主人公のカメラマンが家の住人である桃井かおりを無理やり犯してヒモになったり、それなのに桃井が何のためらいもなくカメラマンを愛するようになったりと古いポルノ形式のドラマから全く抜け出せていないのも不満。その結果いつもの人間関係をじっと見つめる藤田敏八監督スタイルの映画に留まっている。
そして何でこんな緩い映画にあんな動物殺害シーンを入れたんだろう、そこまでして必要な場面とは思えないし…。
まだ初々しい桃井かおりの演技がこの映画の最大のみどころで、例のしゃべり方はしておらず幼い顔立ちといいどこか普通の女性っぽい。しかし翌年の『青春の蹉跌』では桃井独特の演技が完成されており、この一年でどんな人生を歩んできたのかと思ってしまう。それとこの作品が桃井かおり唯一のロマンポルノ参加作品と謳われるが、デビュー作をはじめ一般作品でガンガン脱いでしまっているのでお宝映像的な感じがしないのも桃井らしい。
ピコこと樋口康雄のポップでドライなサントラが映画にぴったりで耳に残るが、何曲か『マル秘色情めす市場』に流用されている音楽があるので不思議な気分に陥る。