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静かなる叫びのkojikojiのレビュー・感想・評価

静かなる叫び(2009年製作の映画)
3.6
No.1657 監督はドゥニ・ヴィルヌーブ。言わずとしれた今話題の「DUNE」の監督さん。
初期の作品。
この監督作品は観れるものは、全て観てしまおうとDVDを借りて観ることにしたのだが、なんといっても仕事帰りすぐの鑑賞だから、それは眠たいし、頭も冴えないし。
それに暗いテーマでちょっと参った。

物語は実際に起きた銃の乱射事件。

1989年モントリオール理工科大学に通う女子学生バレリーと友人の男子学生ジャンは、いつも通りの1日を送っていた。しかし突然、1人の男子学生がライフル銃を携えて構内に乱入し、女子学生だけを狙って次々と発砲を開始。犯人は14人もの女子学生を殺害し、自らも命を断ってしまう。
犯人の動機は実につまらないものだ。
バレリーは重傷を負ったものの何とか生還し、ジャンは負傷した女子学生を救う。それぞれ心に深い傷を負った2人は、その後も続く非日常の中で苦悩にさいなまれる。

 犯人の何故かわからない怒りが、セリフのないモノクロ画面に蠢いて、ピーんと張り詰めた緊張感が、ドキュメンタリーのように「恐怖」を見事に描いてみせる。

 「自殺するぐらいなら一人で勝手に死ね!」
  (私の心の声)
 
 突然訪れるこの犯人の奇行は次々平穏な大学の日常風景を切り刻んでいく。犯人が現れるシーンの衝撃はリアルで、そこに居合わせているような気持ちになる。

 「何をしてる、早く逃げろ!」(私の心の声)

 警備員の元にすぐに走ったジャンだったが、14人の女子学生は時々テレビで見るテロ集団ように、無造作に乱射し撃ち殺されてしまう。そこに警察や警備員の影すら見えない。

 「ジャンが知らせた警備員は何をしているんだ!」(私の心の声)

 観ているこちらまで怒りが収まらない。
 まともな感覚では観れない。
 
 何のためにこんな映画を作るのだろうか?
 こんなことが起きていることをあなたに知らせたい?
 こんな社会を作ってはいけない?
 あなたならどうする?
 どうすればこんなことにならないように出来るのか?
 こんなモヤモヤした気分がぐちゃぐちゃしながら、すごく気分が悪くなる。
これが狙いなのか?
 (ずーっと私の心の声)

事件の後の二人が映される。
こんな事件を体験すれば、そりゃあ、まともな感覚ではいられるはずがない。

 ドゥニ・ヴィルヌーブ監督、あなたはこんな作品作って何が言いたいの?教えてほしい。

 77分と短い映画で、これだけのものを描いてみせるこの監督は、やはり才能はあるのだろう。
 しかし決して好きな作品ではない。
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