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静かなる叫びのnaorinのレビュー・感想・評価

静かなる叫び(2009年製作の映画)
3.8
1989年に実際に起きた
モントリオール理工科大での
銃乱射事件をベースにした作品。
女性の社会進出が少し進んだ時代
自分の人生がうまくいかないのを
全て、男の権利を奪っていく
女のせいだと思い込んだ
反フェミニストの男による犯行で
女性ばかり14人が犠牲となり、
紙一重で生き残った者も
その後PTSDに悩まされ
苦しみ続ける姿が描かれる。

個人的にはこういう
無差別事件が起きるたびに
いつもその動機ばかりが
注目を集めることに違和感を抱く。
なぜ世間は犯行の動機を、犯人の
生い立ちや過去を知りたがるのか。
自分には関係のないことだと
安心したいのだろうか。

襲撃前、自身が犯行に至った理由を
長々と紙に書き綴り
母親には謝罪の手紙を残した犯人。
身一つじゃ何もできないくせに
銃を手にした途端、万能の
支配者にでもなったつもりか。
そして挙げ句の果てには自殺、
自分だけ“苦悩”から解放された。
そんな身勝手な奴の
屁理屈じみた主義主張など、
たとえ通常広く語られるべき
重大な社会問題だとしても
それをきっかけとして議論の場に
のぼらせる価値など微塵もない。
犯行声明など報道してやらない、
握りつぶしてしまうことが
彼らにとって一番の罰に
なるのではないかと思う。

被害者たちは、未来も
誰かに伝えたかった言葉も
一瞬にして
全て奪われたのだから。

ジャン=フランソワの選択が
ただただ悲しい。
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