たなぴ

ガーデンのたなぴのレビュー・感想・評価

ガーデン(1995年製作の映画)
4.4
主人公のヤクプが仕事もプライベートもうまくいかず、また同居する父親にも愛想を付かされ、祖父の残した田舎の家で暮らすようになる。
その家は廃墟のように荒れ果て、草の生い茂る大きな庭にはリンゴの木が実をつけている。そこで、不思議な少女ヘレナ(映画の各章では奇跡の処女)と出会い、自分の人生とゆっくり向き合うかのように、生活をしていく話。

マルティン・シュリークの凄さは、なんともないのんびりとした田舎の風景が、何故か叙情的に観えたりするところ。
また、ものすごく世間離れしたキャラクターたちにも関わらず、それらすら素朴に映し出してしまうこと。
その雰囲気が彼にしか出せない独特さで、私はそこに魅力を感じる。

ストーリーは時が流れるかのごとく、ゆっくりと進んでいく。事実、何か変化があったかと言われると何もないであろう。メインビジュアルの通り奇跡の処女は空を飛ぶけど、それすらも不思議と日常に溶け込んでいる。
その空を飛ぶ(というより宙に浮いている)少女を見た父のセリフが、大したことではないんだけど、とても心に残っている。
ー最後には何とかなるんだなー

観終わったあと、この世界観に不思議と引き込まれてしまう。
本当に「不思議」という言葉の似合う監督だ。
たなぴ

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