ポランスキー×エマニュエルセニエの私小説的物語の始まり。
ポランスキー監督は女優エマニュエル・セニエと結婚して以降、エマニュエル・セニエが目立つような、作品の中にミステリアスな女として一種のファムファタールが出てきたり、『毛皮のビーナス』のようなSM嬢を演じ、ポランスキーそっくりの俳優(特にマチュー・アマルリック)をいじめたりする作品があった。
この作品はそういった監督の作品の始まりだった。
この映画、監督自身の私小説、特にセックス事情を曝け出すかのように前半は激しいセックス描写からだんだんSMの世界に入っていく。
『毛皮のビーナス』もそうだったが、ポランスキー監督はどうやらM、しかもセニエの支配下にいるらしい。
どんどんと二人は愛を求めるがあまり、お互い依存的になっていく、SMも相互依存的な関係の元に構築されていくのだろう。
ここの描写は、『ラスト・コーション』を思い出す。男女の愛はお互いのマウントの取り合いであり、それも立派なサスペンスとなるのだ。
最後はお互いに憎しみ嫌い合い、寝取られ属性まで目覚めた後、死まで絡む。
愛とは、なかなかひん曲がった複雑な代物らしい。
もちろん、ポランスキーとセニエは30年以上夫婦の関係であり、仲睦まじい。
それこそセニエが出てくる映画は、セニエ自身の私小説でもあるのだろう。
映画としては、ポランスキー監督の好きな方の作品ではないので、面白くはない。