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言の葉の庭の雑記猫のレビュー・感想・評価

言の葉の庭(2013年製作の映画)
3.9
 身も蓋もない言い方をすると、「年上ポンコツお姉さんって可愛いなぁ」というフェチを美麗な作画と繊細な演出で練り上げたような作品。

 
 本作は高校生の孝雄と謎の妙齢女性・ユキノの2つ視点で描かれる。前半は孝雄からの視点のみで物語が進行し、後半からはユキノの視点も挿入されることで、孝雄視点では謎の多かったユキノの正体が種明かしされる構成になっている。孝雄の人物造形については、新海監督の得意分野の思春期男子とあって実在感の強いものとなっている。靴職人になる夢への焦りから高校の勉強なんてやってる場合じゃないと学校をしょっちゅうサボり、大人は何も分かってくれないんだと意固地になっている孝雄は、大人の目線からすると「後々つぶしがきくから、とりあえず高校の勉強頑張っときゃあいいのに」と思うのだが、一方で、これくらいの年頃はこういった焦燥感や視野狭窄感が確かにあったなぁと思い起こさせられる。


 一方、ユキノはそういった孝雄を咎めることなく受け入れてくれる存在として物語に登場し、大人っぽい妖艶さを見せつつも、時折子供っぽい面も垣間見せることで孝雄を魅了していく。正直、物語の折返しあたりまでは、男性目線で割と都合のいい人物造形だなという印象だ。しかし、後半からユキノの視点で彼女の性格や背景が語られ、ここでかなり彼女のバックグラウンドが補強される。これによって本作が、少年の抱く大人の女性への憧れに加えて、傷ついた女性の再生という2本軸の物語であることが明かされる。そこを踏まえても、ユキノの人物造形が幼すぎるのではないかとか、大人がそんなに子供に入れ込むことはないだろうとか、男女逆転させると途端に危ない話になってしまうなとか、色々と思うところはある。ただ、ちゃんと子供目線だけではなく、大人目線の裏打ちもしっかりある作品となっている点は評価したいところである。
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