じゅ

オン・ザ・ロードのじゅのレビュー・感想・評価

オン・ザ・ロード(2012年製作の映画)
3.0
複雑だ。

突き抜ける自由、どこまでも続く道、まだ見ぬ景色を求める青い心。
そして、自由には代償があること。自分ひとりの衝動や欲望の先には、気がつけば孤独があったりすること。そんな「大人になった」心。

自分のなかの、どこまでも自由を求める青い部分と、諦めの先で光を、そして安定と穏やかさをつかもうとする「大人」な部分が喧嘩している。

どこまでも破天荒なディーンには憧れるけれど、その先には道がない。憧れる反面、どこかで距離をとって見つめてしまう。そんな自分が寂しいし、「まあ、こんなもんか」とネガポジの入り混じった感情になる。

彼らの旅路はまさに「オン・ザ・ロード」、どこまでも道半ばな気がする。関係ないけど、「理由なき反抗」を思い出した。ディーンだけに。

どこかできっと、「自分のため」をすこし、「周りのため」にカメラを切り替えなければ、この旅は永遠に、アメリカ大陸を彷徨うことになるんだろうな。そう思うと、ラストシーンのほろ苦さが染み渡る。みな、違う道を進む時がくる。それが、青春の終わりだとしたら、振り返らなかったサルは、ピリオドを打ったのだろうか。彼の経験を、「オン・ザ・ロード」という物語に、昇華するために。

きっと僕は、何かを諦めて、それと引き換えに穏やかな(それでいて奇跡的な)時間を取るだろう。けれど心のなかにはいつまでも、まだ見ぬ青空や朝焼けへと意味なく向かう、子どもじみた衝動を持ち続けていたい。
じゅ

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