BOB

紅いコーリャンのBOBのレビュー・感想・評価

紅いコーリャン(1987年製作の映画)
3.5
ベルリン映画祭で金熊賞を受賞した、チャン・イーモウ監督のデビュー作。原作は、2012年にノーベル文学賞を受賞した莫言の同名小説。

"紅高梁"

まさかこんな内容の作品だったとは、、、。

1920年代中国山東省の寒村を舞台に、病気持ちの老人の元に嫁がされた女性がコーリャン酒屋の若女将として逞しく生きていく話かと思って観ていたら、後半以降、プロパガンダ的ともとれる悲劇的で壮絶な抗日ものへと様変わりした。この手の作品として有名だったらしいのだが、事前情報なしで鑑賞したので衝撃的だった。

紅🔴を基調とする豊かな色彩表現が印象深い。冒頭の花嫁の衣装と嫁入り神輿の紅に始まり、逆光ショットによる太陽の紅、コーリャン酒の紅、流血の紅、燃え盛る炎の紅と続いていく。特に、終盤にかけて画面を支配する村人たちの情念が乗り移ったような紅色はあまりにも強烈。コーリャン畑の緑🟢や、真夜中の太陽の青🔵、大地の黄🟡との対比も鮮やかだった。共産主義の赤という意味もあったのかもしれない。

1930年代、中国侵攻を進める日本軍描写がショッキング。住民たちを総動員して足踏みによるコーリャン畑刈りを強要した挙げ句、生きたまま頭の皮を剥がせるという残忍極まりない処罰に出る。これ程までに"日本人=絶対悪"とする映画を初めて観た。憤りや嫌悪感は抱かなかったが、かなり面食らった。

前半は、造り酒屋の男に嫁いだ九児に対して男が強引に結婚を迫るというのがメインストーリーなのだが、なんだかよく分からなかった。悪戯でコーリャン酒に小便ぶっかけたら名酒が出来上がったって、どういうこと?コーリャン酒屋の生活描写はリアリティがあり、興味深かった。

オープニングショットは『紅夢』に酷似。不安と戸惑いが入り交じる嫁入り前の女性(コン・リー)の表情を、カメラが真正面から捉える。
 
嫁入り行列の籠持ち達が荒い荒い。あんなに揺らされたら、酔って吐くのも無理ない。花嫁が不憫で仕方なかった。

kowtow(叩頭)。

64
BOB

BOB