このレビューはネタバレを含みます
監督本人が「本作のハードルはどうしても越えられない」と語る、白石晃士処女作にして最高傑作。
いや、大ファンだし、『コワすぎ!』シリーズとか『オカルト』とか色々大傑作撮ってはいるけど、自分は『コワすぎ!FILE-04』と本作がツートップで最高傑作だと思う。
若いのにこれを撮ったのは凄いとか暴力が容赦なくて凄いとか色々素晴らしい点はあるが、何よりもまず、
"暴力映画"あるいは"暴力についての映画"
(自分の知る限りそれは『わらの犬』や『スーパー!』などの属するジャンルの事である)
という一大ジャンルに見たこともないような完璧な新しい答えを出したのが凄い。
大学サークルの新歓コンパでの体育会系的アルコール強要という暴力
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それに抗い退部させられた二人の暴力人間が、サークルの人々とその周りを巻き込みつつ大暴力を展開(それを白石くんが撮りつつ、暴力のおつりを全身で受け、彼らに加担もする)※これが本作の大部分
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サークルの偉いやつを圧倒的暴力でしばき倒そうとするも、行き過ぎた暴力に疑問を感じた白石くんが止めに入る
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もみ合いになり暴力が臨界値を迎える
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暴力人間バンド結成!!!
まず暴力の出発点が、世間一般でもある程度見過ごされているであろう「上下関係によるパワハラって腹立つよな?」という点が素晴らしい。
新歓で後輩に酒を飲ませまくっていた先輩を拉致し、度数の強い酒で泥酔させた挙句滑り台から転がし落とし蹂躙するシーンの胸のすく気持ちには涙が出るほどだ。
そして、最終的に暴力による対立が限界値を迎えると行き場を無くした暴力は"暴力人間パンクバンド結成"という結論を迎えるのだ。
ここまで完璧な答えはあるだろうか、
滑稽かつ陰惨な暴力が突き抜けた先には言語化不能な初期衝動と音楽があった。
突き抜けてしまったのだ。
途中から代役としてなぜか投入された黒子がちゃっかりバンドメンバーに入っていたり、ザ地元感漂うスタジオでの荒々しい演奏シーンには暴力を超えた善し悪しすらあいまいな何か、すなわち何ものにも代え難い映画的エモーションがある。
ハンディカム内蔵のマイクで録音した割れまくりの音声や、これぞ90年代のビデオ感溢れる無骨なテロップ、インダストリアルなどんちき祭り囃子音楽。
「これは暴動の映画ではない、映画の暴動だ!」は『爆裂都市』の謳い文句だが、
暴力人間は
「暴力の映画ではない、映画の暴力だ!」