猫脳髄

暴行切り裂きジャックの猫脳髄のレビュー・感想・評価

暴行切り裂きジャック(1976年製作の映画)
3.7
日活ロマンポルノのバイオレンス作品。ロマンポルノは一定のフォーマットを満たしていれば、製作上かなりの自由度があったそうだが、もはやポルノであることを忘れ、真正・和製ジャッロと化したジャンル破壊的な逸品である。

ケーキ職人の林ゆたかと喫茶店員の桂たまきが偶然殺しの味をおぼえ、殺しがなければ昂らないと、次つぎに殺人を繰り返すという筋書き。当初は臆病だった林が覚醒し、桂の知らないところで美女たちをどんどん血祭りにあげていく。林の得物がケーキ用のパレットナイフ(本来切る目的ではないし、容易に曲がってしまうのだが)なのは措いて、丸眼鏡でおとなしそうな(しかし細マッチョ)殺人鬼の目線で展開する血みどろジャッロである。

演者・スタッフの名前がスパッと切り裂かれるタイトルバックから凝っている。凝ったショットも散見され、廃ボウリング場のロングショットや死体ナメの絡み、フラットな洋風霊園でのロングショットの絡みなど一見に値する。また、血に狂った林がクライマックスで看護師寮を襲撃するさまも見どころである。

脚本の桂千穂と言えば、同じ日活の「ズームアップ 暴行現場」(1979)のシナリオに驚かされたが、こちらは王道として楽しませてくれる(夜間の篠突く雨や廃墟など、桂好みの共通性がある)。スキャットで一貫した音楽もよい。
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