オーウェン

人類資金のオーウェンのレビュー・感想・評価

人類資金(2013年製作の映画)
1.5
この映画「人類資金」は、「ローレライ」「亡国のイージス」の福井晴敏原作。
といっても原作が先にあるのではなく、「亡国のイージス」で組んだ阪本順治監督が「M資金を題材にした映画を作りたいので、一緒にやりましょう」という訳で原作を書いたもののようだ。

私自身が、最近の金融というものに疑問を感じていて、当初は「お金のある人が技術や知恵はあるけど、お金のない人に資金を提供して経済や技術、サービスを発展させていく」という場である筈だった金融や株式というものが、そういう理想からはかけ離れ、金だけが動き、それに直接関係ない人間までも振り回される現実となっている。
だからそれに対して、福井晴敏がどう答えを出したかに興味があったが、結果は全くの期待はずれだった。

真舟に誘いをかけて来たのは、言ってみればM資金管理団体の反乱軍。
理事長の笹倉の父は、初代のM資金の管理者。
しかし、日本の復興に役立てるはずのM資金が、いつしか単なるマネーゲームの元手に成り下がり、世界には携帯は50億台も契約されているのに、7割の人が電話をかけたこともないという格差を、何とかしたいという気持ちから動いた人々。

それで、M資金をサイバー攻撃で移動させようとしたのだが、失敗。そして遂に、詐欺をしようということになった。
ロシアでオダギリ・ジョーを相手に一芝居。
ここが前半の見せ場な筈だが、わりとあっさり成功して終わる。まあ、昔のと違って今は全てオンライン上のやりとりだから、お金というブツが動くわけではなく、映画としてはやりにくいだろう。
香取慎吾が首謀者で、実は笹倉の息子。
カペラ共和国という、アジアの発展途上国と出会い、その国を救おうと国民の教育の為にPDAを配る。
いや貧富の差をなくすために、国民の教育が大事というのは解るが、PDAを配っただけで変わるのだろうか?

クライマックスでは、カペラの国連での支持を取り付けようと、国連会議場で一大演説をする、というもの。
観ていて、正直、がっかりしてしまった。

予告編を観た時、森山未來が、何やら手に機械を持って宣言しているカットが出てきたので「国連会議場を爆破する。起爆装置はここにある」とでも言っていると思っていたのだ。そういう画的的なものがないと、映画として全く面白くない。

もともと福井晴敏作品は、「現在の体制をどこかの時点でぶっ壊して、日本を、世界を作り替える!!」と狂信的なテロリストがいて、そうはさせないと戦う主人公、というパターンが多い。
だから、てっきり、そうなるだろうと思い込んでいたのだ。

結局、資本主義をぶち壊すのではなく、発展途上国の人々を教育しましょう、というのが福井晴敏の答えなのか。

あと、香取慎吾が素人の学芸会的な演技で、全くダメダメ。
それに、全く役に似合わず、ミスキャストとしか言いようがない。
森山未來は、国連での長い英語のセリフもこなし、これはなかなか良かったと思う。
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