はんだ

わたしはロランスのはんだのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.5
別れるときに、「喜んで欲しかった」と本当の自分よりも男の格好でフレッドに会いに来ていたロランスの気持ちを考えると涙が出た。本来、パートナーを喜ばせることに本当の自分のアイデンティティを押し殺すまでの必要はない。
けれど、ロランスは生まれながらにして、自分に正直に生きることならばその事と戦う責務を背負っていた。その上で、苦しみながらも自分の生きたい姿へと自力で近付いていった。
正解の形はわからないし、無難に生き抜く(ロランスがフレッドの家庭をそう揶揄したように)ことも正解の一つだったのかもしれない。けれど、フレッド母がフレッド父の観ているテレビを壊したときのように、何かを壊してでも自分の心に近い姿に移っていく様子はかっこよく、美しかった。
また、この映画の時代よりも少し進んだ現代では、自分の心により近付いていく時に、負う必要のない悪意やしがらみが減っていればいいな、と思った。
冒頭でロランスがフレッドに洗濯物をかけて遊んでいたみたいに、フレッドが自分の子供にもそれをやっていたシーン。ふとした時に以前の恋人を思い出す、あの感情を覚えた。
青と赤がそれぞれ象徴的に使われていた(ラスト、ロランスは紫色)。他にも印象的なシーンがすごく多く、色彩やカット、音楽含めた物語全体が心に強く残った
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