鹿江光

ウォッチメンの鹿江光のレビュー・感想・評価

ウォッチメン(2009年製作の映画)
4.0
≪80点≫:沈黙という正義の形。
やっと観る気になったので鑑賞。非常に文学的。視覚的な情報を楽しむというよりは、奥底で語られていることに耳を傾ける作品だ。ヒーロー映画もここまでリアルに映し出されると、娯楽としてまったり観ていられない。「平和ってなんだろう」「正義ってなんだろう」と、答えが出るはずもない事柄に考えを巡らせながら終わっていく。
果たしてこの映画における「正義」とは何か。世界平和のためなら多くの犠牲を厭わない精神のことか……自らの道徳に従い、真実のみを世界に暴こうとする精神のことか。どちらにせよ犠牲は避けては通れない。
おそらくこの現実も、「沈黙」によって平和と正義が保たれてきたであろう。そういった世界にとって、ロールシャッハやコメディアンは悪しき存在である。黙っておけば平和が保たれるのに、なぜ彼らは真実を語ろうとしたのだろうか。
ただ我々は真実を語ろうとする精神が、決して死なないことも知っている。形は変われど、彼らの精神は世界を常に危機へともたらす。しかし、危機に陥るからこそ「正義」について真剣な議論が交わされる。
監督はザック・スナイダー。全体的に観れば少ないアクションシーンも、かなりのインパクトを放っている。そして観終わる頃にはロールシャッハが特別な存在になっている。カッコいい。
いつか現実もヴィジランテが登場するような世界になるだろう。その時が正義の分かれ道だ。
鹿江光

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