くじらめくじら

トゥ・ザ・ワンダーのくじらめくじらのレビュー・感想・評価

トゥ・ザ・ワンダー(2012年製作の映画)
4.0
ひたすらに運動でつなげていく映像。脈絡はなく、距離を隔てた遠いところで光と闇が戯れているのをぼんやりと見つているような感覚になる。奥底で流れるテーマは明示されないが、表層にある美しい映像とのあいだの距離とズレによるおもしろみがある。
脱臭された、ただただ美しい映像はふわふわと浮かんでは消えていく。全てのカットは等価で空しい。
カメラを構えている監督の存在を強く感じる。ものすごくプライベートな体験を描いていると思うが、監督自身画面で起こっていることを超越した視点から見ている感じがする。ルベツキ特有のグニャグニャなカメラがいくら俳優たちの顔に間近に迫ろうとも、そこに一切の感情移入を煽るような要素はない。しかし(だからこそ?)同時にある種の怖さ(無に飲み込まれるような漠然とした恐怖)を感じる瞬間もあり、監督自身、痛みを伴いながら映画を作っているようにも感じられる。
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