かたゆき

オーガストウォーズのかたゆきのレビュー・感想・評価

オーガストウォーズ(2012年製作の映画)
2.0
2008年、次第に悪化するロシアとの緊張から不穏な空気が漂う小国グルジア。
ロシア軍兵士である夫と離婚し、シングルマザーとして最愛の一人息子と暮らすクセーニアは、彼氏である会社社長と結婚を巡る重大な局面を迎えていた。
だが、息子チョーマは極度の空想壁により、いつも面倒ばかりを起こす問題児。
「たった一日だけなら…」と、彼氏との婚前旅行のために、チョーマを元夫が赴任するグルジアのロシア軍駐屯地へと預けることにしたクセーニア。
それが、親子の絆を断ち切るほどの過ちになるとも知らずに……。
グルジア紛争という実際にあった戦争を背景に、決死の覚悟で愛する息子を追い求める母親のドラマを、憧れのヒーローである巨大ロボットを夢見る少年の虚実入り混じる視線を絡めて描き出す軍事アクション。

予告編のそのごりごりのロボットものっぽい内容を見て、きっとこれは「ロシア版トランスフォーマー」なんだろうなーと、昔からそんなロボット系が苦手な僕はずっと敬遠してきた本作。
なのですが、実際のグルジア紛争を背景にしているということに興味を惹かれ今回鑑賞してみました。

冒頭から、そんな巨大ロボットは主人公である少年の空想の中だけにしか出てこず、あとはずっとリアルな戦場描写が延々と続き、「あれ?これってもしかして僕のこよなく愛する『パンズ・ラビリンス』のロシア・少年・ロボットバージョンなの?!」と否が応にもテンション上がっちゃいました。

でもね~、そんな何の力もない少年が目の前の理不尽で残酷な現実にただ想像力のみで立ち向かうという設定が活きてくるのは後半15分だけってバランス悪すぎじゃないっすか、これ。
これでは、この魅力的な設定がなんだか蛇足となってしまった感じがして僕はいまいち乗り切れませんでした。
それにロシア軍全面協力だから仕方ないかも知れませんが、後半の臆面もないロシア軍礼賛描写にも辟易です(激しい銃撃戦の後に、クセーニアが発する「これで給料幾ら貰ってるの?」という問いに、ロシア兵が「大した額は貰っちゃいねえ」と答えるというクサい演出にはちょっぴり失笑)。
でもまあ、ハリウッドも似たようなことしてるからおあいこかな(笑)。

結論。
あくまでリアルな戦争アクションにしたかったのか、想像力豊かな子供の目で描くファンタジーにしたかったのか、僕にとってはなんとも中途半端な印象の強い作品でありました。
かたゆき

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