トランティニャン

11'09''01/セプテンバー11のトランティニャンのレビュー・感想・評価

11'09''01/セプテンバー11(2002年製作の映画)
3.0
オムニバスで、しかも9・11という巨大な題材を様々な視点から切り込んでいるため、総合的に評価しづらい作品。さらに、「正義は一つじゃない」とか、「お前らが今までどれだけひどいことをしてきたか」と明け透けなアメリカ、及びブッシュ批判をされても、凡庸に映ってつらいものがある。

反面、本作にはあまりに多くの出来事が起こり過ぎていて薄れていた「あの日」の記憶を生々しく思い出させるだけの力があって、各監督が真摯に「あの日」に向かい合ったことに感謝の念すら起こった。

中でもクロード・ルルーシュの作品と、イニャリトゥの作品は完成度も高くて引き込まれた。
クロード・ルルーシュの方は耳の聞こえない女と、聾唖者のためにNYをガイドする男のラブストーリーで、女の日常を観る者に主観的に体感させようと、音は低周波のような振動を除いてはミュートされている。それが巧妙な物語を生み出していて、彼女はそれ故外で何が起こっているかを知らぬまま、恋の終わりをこの世の終わりかのごとく嘆き続ける。細部にまで演出が行き届いていたことからして、何となく9・11以前から構想があったんじゃないかとも思わせたが......。

イニャリトゥは逆に視覚的表現を極力抑え(画面はほとんど真っ暗)、世界各国のニュース音声などを駆使することで、「あの日」感じたショックや混乱を痛々しいまでに表現していた。この切り貼り編集の巧みさや、直接的な神への言及は何とも彼らしい。あと、ショーン・ペンのも嫌いではないです。