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ヴァイブレータのnotitleのレビュー・感想・評価

ヴァイブレータ(2003年製作の映画)
2.6
廣木隆一監督はまぎれもなく一流の映画監督であり、芝居の付け方や演出もさることながら自然光や情景や長回しを主とした映像表現は見事なものである。

本作でもその演出や映像表現は存分に活かされていて、トラックの主観映像や夜の町や道路、寺島しのぶと大森南朋の自然な会話などは、後の『ストロボ・エッジ』の中にも見て取ることができる。

しかしながら、廣木監督はハネた表現で自由奔放に撮らせてしまうと却って映像や演出ばかりが先行して支離滅裂になってしまう嫌いがあるようだ。
実際、寺島しのぶの演技には鬼気迫るものがあるが、迫真すぎて却って腹が立ってしまう。本物の頭のおかしい人に見える。そして、語りの塩梅を間違えてしまうと、下手をすると「頭のおかしい人間が頭のおかしい行動をする」それだけの映像にしか見えなくなってしまって、危うい。

思うに、廣木監督はインディーズ系の前衛映画よりもジャンル映画のようなある種の型がある作品を、腕のしっかりした脚本家と組んで制作した方が表現としても深みが出て良い気がしてならない。
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