YokoGoto

ばしゃ馬さんとビッグマウスのYokoGotoのレビュー・感想・評価

4.2
やはり大好き。声を大にして言いたい。吉田恵輔監督はサイコー!
突然、吉田監督作品に目覚めたので、見るのが遅くなってしまった「ばしゃ馬さんとビッグマウス」。この後の作品、堀北真希さん主演の「麦子さんと」は、全く良くなかったので、どうしちゃった感があったのだが、やはりばしゃ馬さんは良かったか!


脚本家をめざしているが全く芽のでないアラサー女性。シナリオライター講座で、ビッグマウスの男性と仲良くなり、一緒に夢を追いかける話。
「夢をあきらめられないもの」「夢をあきらめたもの」「夢と向き合うことができないもの」のそれぞれの葛藤と人生の一幕を描いている。

本作の脚本は、吉田監督と仁志原了さん。
さすがこの二人は、痛いとこついてくる。

まず最初に、キャストが良い。最初、麻生久美子さんの相手役が関ジャニ∞の安田くんって、「ジャニーズでしょ?」と二度見してしまうほど驚いたが、これがドンピシャはまり役。彼に演技をさせなかった監督の作戦勝ちである。
麻生久美子さんも、驚くほど美人なのに、今回はスッピンやつれ顔で頑張ってたなー。いいよ、いい。



あと、いわずもがな、脇役のキャラクターの濃さときわどい演技は相変わらず鉄板。
主人公の脚本にダメ出しする、ゆるーい映画監督のうさんくささとか、中華屋で働く中国人のバイト仲間とか、ファミレスの店員とか、主役の二人以外のキャラが細かく設定されていて、それが面白くて奥に映るエキストラさえも目が離せない。主役以外の登場人物に注意してみると、映画が倍楽しめる。

「痛さ」が満載。(笑)
(うさんくさい監督のダメだしは、邦画界への吉田監督の風刺というか、イヤミはいってますよね。ウケる。)


こういう細やかな描写が、個人的に大好きだし、監督の素晴らしいところ。


さらに、シナリオも痛ゆるホンワカ。
癒される所もあるし、ジーンと心に突き刺さり泣けてくる場面も多数。
この絶妙なバランスこそ、吉田監督のセンスと才能。

ほんと、夢に向かってバシャウマのように本書きに挑む主人公が、これまで積み上げてみた人生の重さが、色んな所に表現されていて胸が痛かった。
特に良かったシーンは、ネタバレしない程度に書くと、元カレとのシーン。ビールを飲んで泣きながらクダをまいた後の、元カレとのからむシーンはかなり痛い。痛いほどリアルで、胸にくる。

実際ここは、29テイクだそう。相手が、現在進行形で仲良しの安田くんではなく、“元カレ”ってとこがポイントだ。 (笑)




リアルな人生に筋書きはない。
辛い場面で、空気を読まず笑いが入ったり、笑える場面で、決して綺麗とはいえないシーンが割り込む。
「でも、それでもいいじゃないか。生きてるって感じで。」
なんていうメッセージが聞こえてきそうな映画だった。

ただ、ラストシーンは、イマイチ監督っぽくなく、上手くおさまっちゃった感じがあるのは気のせいかな?一つ手前で、気持ち的に完結してしまったのだけれども、最後はやはり二人を描かなきゃいけなかってことだろうか?(笑)
YokoGoto

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