ケタミン

ゼロ・グラビティのケタミンのレビュー・感想・評価

ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)
4.5
公開前の試写会で観たので、もうだいぶ時間が経つ。
それでも強烈に記憶に刻み込まれてる。
劇場で出会えたのは幸運だった。

宇宙飛行士がスペース・デブリによる事故から生還するという、ただそれだけの話。登場人物はたったのふたり。
それが、これほどのスペクタクルになるとは。

冒頭17分の長回しを始めとして、とにかくカメラワークがすごい。
体験型映画の最高峰と言えるのではないか。
事故の発生から生還までを実時間に沿って淡々と描いてるだけなのに、それがもうリアルでスリリングで、リアル通り越していったん死んで生まれ直すみたいに、ある意味とても霊的な作品。
宇宙空間の無重力状態では肉体の能力というのは無に等しく、かわりに知性や想念の影響力、すなわち精神力がすべてとなる。そういう状態をとことん現実的に精密に描き出すことによって、ほとんどスピリチュアルな領域にまで達した希有な映画だと思う。

原題は単に『Gravity』(重力)だが、その語源が 'grave'(墓/死/あの世)であることを考えると、このタイトルにはいろいろな意味が込められていると想像できる。
邦題に「ゼロ」なんて付けてほしくなかったなあ。
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