じゅぺ

パトリオット・デイのじゅぺのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
4.8
理不尽な悪にどう立ち向かうかの答えは、いつも君のそばで笑ってる人にあるだろっていう、見方によってはあまりにも青臭いメッセージが込められた作品。しかし愛ゆえの危うさも隠さない。これほど生々しく一人ひとりの顔が見える伝記映画もないと思う。今見るべき大傑作

あくまで戦う人たちのスケールは「ボストン」に収まっていて、アメリカの正義がどうたらこうたらっていう勇ましい戦いの話にまで拡げなかったのが良い。そこまでいくとイデオロギーの対立になっちゃう。「ボストン」という大好きな地元、顔の見える範囲で悪に対抗するからこそ、普遍的な善の戦いになる

主義主張の戦いじゃないんだよ、これ。彼らは「人殺し」という絶対の悪と戦ってる。人の命や手足を奪うことを肯定する文化なんてこの世界にはないはず。この戦いは誰もが憎む悪が相手なんだ。だから、主人公たちの原動力は「愛」になる。難しいことなんて何もなし、ボストンの平和を取り戻すための戦い

このメッセージにこそ「パトリオット・デイ」の価値があると思うんだよね。だっていくらテロがいけないことだとしても、主義主張の争いになったら、お互い譲れないところが出てきちゃって、まともな解決なんて難しいんだよ。だから、いくら綺麗事だと思われても「愛」とか「平和」を求め続けるしかない

自分が愛する人、自分を愛してくれる人の笑顔を守ろうぜ、理不尽にも強く立ち向かっていこうぜっていうバカみたいにマジメでまっすぐなメッセージ。でも、世界中にテロや戦争で苦しむ人がいるからこそ、同じ方向みて団結できるんじゃねーかって気もしてくる。すさまじく前向きな映画

殺伐として暗い世界、どんどん未来に雲がかかっていくように思える今だからこそ。辛い過去を乗り越えて励ましてくれるこの映画に泣いた。クライムサスペンスなのに超ロマンチックなんだよな、この映画は
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