ハナハナさん

パトリオット・デイのハナハナさんのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
2.3
※書きかけ
これは被害者の方がいる実際の事件を元にした映画なので、書くのが憚られる部分もあるけれど、個人的にアメリカ至上主義、ステレオタイプの正義のヒーロー、悪に屈しない私達、という 恣意的な標榜がかなり盛り込まれていたように思う。

この映画では
愛と憎悪
天使と悪魔
善と悪
被害者と加害者
勇敢な者と卑怯者


という対極的な比較表現を 登場人物が頻繁に口にするのだが、これもアメリカは常に正しく、イスラムは間違ってる」という アメリカの持つ根強い価値観とその対立構造を浮き彫りにしているようだった。
劇中を多く占める、アメリカ人が正義感に溢れて 友人、家族、市民が互いに信頼し合い結束を強めている様子、

一方でこの映画に イスラム教徒の人々にそのようなシーンはほとんど見当たらない。犯人の家庭はとかく冷え切っており 全ての人物の人間性が伝わらない、それは犯人という立場上、仕方がないことなのかも知れないけど…

事実を元にしている為、捜査本部のプロフェッショナルな熱意ある捜査は、リアリティがあり見所だ。
しかし、それに比べて実際の事件を元にする上で 最も肝心な「犯人は何故凶行に走ったのか」という動機の部分は、ほぼ描かれていないのが気になる。

彼らは本当に「憎悪にかられた狂ったただの卑怯者」だったのだろうか?

犯人がチェチェン人であったこととその背景について掘り下げられなかったのも残念。
この映画では、犯人は、「学校でドラッグを売るようなクズ、ポルノ好きで暴力的 感情的、頭の悪い冷酷無慈悲な弱虫のイスラム野朗」でしかない。


無差別テロはどんな理由があろうと、決して許されるものではない。

が、このようなアメリカ映画によくある主観的過ぎる解釈、一方的でナショナリズム的なまとめにはいつもすこし引っかかりを覚えてしまう。
イスラム教徒の観点からはまた違った意見も出るだろうと思う

シリアなどの紛争地では毎日、大勢の人が亡くなっているが、そこに焦点が当たる事はない。
そして そんな場所でも、ボストンの被害者の方々と同じように誰かを愛し、それぞれの思いを抱えながら人生を生きてる人が、死んでいってることを思い出した。


被害にあった人々を支える絆と、このテロの悲劇を乗り越える強さには、感動した。
憎悪を生み出すものはなんなのか、何が敵意を助長するのかを個人的に考えさせられるキッカケになる映画だった。
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