モリモト

パトリオット・デイのモリモトのネタバレレビュー・内容・結末

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ポスターからダイハードみたいなアクション映画だと思ったら、シビアな実話をベースにした映画で面食らう。でも、ダイハード3には近かったかも。

テロや捜査の場面に緊張感とリアリティがあって、アクションシーンも良く出来ていて、サスペンス映画として間違いなくおもしろい。
が、タカ派的なノリがそこかしこに顔を出してくるのが非常に引っかかった。
気持ちは分からないではないが、犯人を悪魔と称してバッサリ切り捨ててしまうあたりは、ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言を思い起こさせる。
ジョン・グッドマンが「写真を公開しろ!」と迫り、主人公もそれに乗っかるのは結果オーライだったけど、間違ってたらどうすんのよとザワッとした。全然グッドマンじゃないよ。
(「サバイバー:宿命の大統領」はこの辺のバランスが取れていた)

最後は主人公が「悪魔に愛で勝った」ってKANみたいなこと言ってて、困難にあった時の心のありようの話をしてるんだろうけど、それにしても最後の方で犯人を追い詰める警察の物量が冗談みたいに凄くて、結局は圧倒的な武力で勝ってるよなという気にさせられる。

この手の映画によくあるやつで、エピローグに実際の人々の映像が流れるけど、これがまあ長尺で、「奇跡体験!アンビリバボー」みたいになって一気に萎えた。
DVDの特典映像とかだったら、こんな気持ちにはならなかったのに。
また、普通の映画だったら事実と違っても、映画と事実は別モノとして観れるんだけど、実際の映像が妙に長いせいで、事実と脚色の距離が気になってくる。
主人公が重要な場面に常にいてキーパーソンになっててリアリティがないとか、
中国人の重要なキャラがステレオタイプなメガネのパソコンオタクとか、
犯人の実像はよく分かってないのに、過剰にボンクラに描かれてるとか。
特に犯人の弟の方は劇中では甚だしいバカだけど、実際は医者を目指して有名大学に進学したインテリだったみたいだし。

ラストはボストン市民の団結の物語として感動的に締められるが、この事件でアメリカの保守派が増長して、トランプ大統領にも繋がったであろうことを鑑みると、とても複雑な気持ちにさせられる。
「ボーリング・フォー・コロンバイン」と「ビッグ・シック」を合わせて観ると、なんとなくバランスが取れそうな気がする。
モリモト

モリモト