えむしーはまま

パトリオット・デイのえむしーはままのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
4.5
素晴らしい映画だった。

記憶に新しい、ボストンマラソンを標的として実行されたテロ事件をモデルに制作された映画。

登場人物一人ひとりの生活にフォーカスをあててのスタート。
全くまじりあいのない時間から、次第に点と点ができてきて、
一つのテロ事件で結ばれていく。

すごいなと思った点がいくつかあるんですが、
一つ目は犯人が完全なる悪として描かれていないように見えること。
アメリカの作品って、悪は悪として強調され、なぜそこに至ったかとかあまり見かけないことが多い印象だったのですが(特にテロの映画とか)
本作品はちょっと違う印象を持ちました。
イスラム教に傾倒していきいつしか独自に過激派の思想に染まっていく模様が描かれている。
彼らは彼らなりの信念があり、熱心に信仰しているのだ。
しかし一方で(特に弟は)アメリカ社会に溶け込み友人と過ごし結婚もし、生活をしているさまは、ある意味恐ろしい。

二つ目は力強い唯一無二のヒーローがいないこと。
主人公が絶対的なヒーローというわけではない。
どちらかというと、出てくる人みんな(犯人以外は)間違ったことは言っていないし、それぞれができることを前を向いて最善を尽くしている。
それが、よりリアリティを醸し出しているし、人間らしさが伝わってくる。

困難を乗り越え前を向き、一丸となる町への感動と、
市民一人一人がその主人公である雰囲気。
また、一方で犯人が犯人となっていく過程にも目をむけ、
アメリカ社会が抱えるイスラム教や移民への差別意識をやんわりと指摘してくる感じ。

素晴らしい映画でした。
この事件で犠牲になられた方に心よりご冥福をお祈りいたします。