中庭

不思議なクミコの中庭のレビュー・感想・評価

不思議なクミコ(1965年製作の映画)
4.1
自問自答を要請されてもひらりとかわすクミコは、国家や境界に影響されることなく、「私」の自明性の不安定さも気にせず作家を動揺させる。
電話占いを聞く彼女が笑いながらこちらへ振り返ると、オフの声で電話占いの音声が流れ出す。オリンピックの短距離を見る観客の中に偶然クミコを見つけたような、観客の顔の連鎖も素晴らしいと思った。
マルケルの電脳空間におけるデジタル処理の危うげな解像度を、フィルム上映で見るという複雑な体験もできて何より。
『サン・ソレイユ』ほど強烈なフッテージはなく、あくまでクミコの身体やその身ぶり、言葉を介して、オリンピックに色めき立つ東京の姿が浮き彫りになる。
水曜どうでしょう的な、車窓の風景にクミコとマルケルの会話が重なるところが個人的に大好き。
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