レイ

ハンナ・アーレントのレイのレビュー・感想・評価

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
3.6


元ナチス高官でユダヤ人の強制収容所移送の責任者だったアドルフ・アイヒマンの戦争裁判を巡るハンナ・アーレントの独特の見解にフォーカスした哲学映画。

ハンナアーレントはユダヤ人で自身も収容所に入れられた経験がありながら、アイヒマンを擁護するかのような裁判傍聴記事を書き、さらには裁判で明らかになったユダヤ人指導者たちの収容所移送への協力を記事にし、ユダヤ人社会のみならずイスラエル人からも批判され、友人から非難されても、彼女はずっと思考することを止めず、意見を変えませんでした。

ハンナはアイヒマンを思考停止し人間をやめた存在だと言いましたが、まさに彼女を批判している全体主義の社会が思考を停止した人間たちだと思いました。彼らは記事を読むこともなく批判しており、ハンナがアイヒマンを擁護しその上ユダヤ人を非難している、という事柄しか見ていません。しかもそれは読めばハンナが言いたいのはそうではないと理解できるのに彼らは怒りでいっぱいで、それ以上の思考をしないのです。

ラスト8分間のハンナの大学での講義での「理解する責任がある」という言葉を聞き考えさせられました。というかこの講義のシーンが一番心に響きました。

後気になったのは喫煙シーンの多さです。ハンナが愛煙家だと調べて知りましたが、本当にずっと煙草を吸っている笑。ヒトラーは嫌煙家だったそうですね、対極の存在だということを表しているんでしょうか。

見終わったら思考せざるを得ないですね。次はスペシャリスト、アイヒマンショーの二作を見たいと思います。
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