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ハンナ・アーレントのKのレビュー・感想・評価

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
4.1
ハンナアーレントの、悪の凡庸という定義は本当に面白い。
ここの時代のこの情勢のハンナの、「ある視点」からの考えというのはとてつもなく重要で、この時代の良識ある人間が物事を俯瞰し、多角的にみる事に必要であったと考える。

この大虐殺の残忍さや、アイヒマンの犯した罪についてはもちろん認められなければならないし、忘れられない暗い時代という認識を否定するわけではなく、この惨劇の根源にある原因とはなんだったのかという話で、感情論とは切り離された問題をハンナは公平な立場から論じた。
相手の側にたって思考するプロセスは、日常生活においても重要であり、相互の理解はそれのみにおいて成立する。
民族によってカテゴライズされた抹殺を非理論的、非人道的に行ったナチスを、ドイツ人とSSに括り付けてただ避難するだけという被害者では、なんら変わりがなく、成長や進展もしない。ハンナはより深層にある問題を見て欲しかったのだろう。

重要な鍵は、ハンナも当事者であるということ。この事実に裏付けされた彼女の賢明さ、勇気は底知れないものがある。

今、ISによるネットを介した実態のないテロリストに手を打つ事ができないこの時代で、凡庸な悪という概念はしっかりと見直さなければならない。
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